2011年08月07日
ソファーのおはなし。
先日とてもお世話になった元上司にソファーを頂いた。
数十万円もするヨーロッパ製のソファーでとても立派なものだ。
でもポイントはそこじゃない。
このソファーを頂く話が出た時、私達夫婦は今住んでいる借家には
分不相応だと思い、この有り難い申し出を断ろうと思っていた。
その話を聞きつけた私の母が
「断るなんてもったいない。あなたが貰って私に譲ってくれないかしら?」
と言って来た。
私はそれも良い考えかも知れないと思い夫に相談すると、いつも温和な夫は一瞬
怒ったような顔をして
「それはいい考えとは思えない。」
そう言った。
私がなぜか?と聞いてみると彼はこう言った
「僕らが貰わないとしたら、あの人は別の大事な友人に声をかけるだろ?
だから僕らが使わないのだとしたら、ちゃんと貰わないべきなんだ。」
そう言われてハッとした。
そうか、私達がお世話になった元上司は
激情型で仕事にとても厳しくて、その激しさから敵も多い人だった。
でもその反面、人一倍思いやり深く、人一倍愛情深い人なのだ。
そんな上司が、私達にソファーをあげたい。と連絡してきた。
私は夫の言わんとする事に気付いて、すぐ母に電話して断ることを伝えた。
すると母は
「そうね、そうだったね。あなた達がお世話になったあの方は、
そういう人だった。」
ごめん、ごめんと笑いながら電話をきる。
週末私と夫は、お中元を持って元上司に挨拶に行った。
するとそのソファーはとても綺麗に片付けられた部屋の中央に
配置されており、すごく上司の家に似合っているではないか。
ますます貰えないなぁ・・・そう思っていたら、元上司はこう言った。
「どうだ凄く立派だろ。家内もとても気に入ってたんだが少々置き場に苦労するんだ。どうか貰ってくれないか?
いや、実はな、来月一人娘が臨月で実家に帰ってくる。だから部屋を一つ開けないといけないんだよ。」
いつも厳しい表情の元上司の顔がほころんでいる、嬉しさを隠せないといった様子だ。
その様子を見て私達夫婦はソファーを貰うことにした。
そして今、私達の六畳のリビングにやってきて、威風堂々と居座るソファーを眺める。
ことの顛末を思い返すと”贈り物”っていうのは、こういうことを言うのではないの
かと思えてくるのだ。
幸せの伝播、大切な誰かにリレーしたい気持ち、相手の気持ちを慮って、笑顔で頂く贈り物。
そういう訳で我が家のものになったソファーは、この家の誰よりも大きな顔をして
リビングに鎮座している。
なんてことはない、ソファーのおはなし。
Posted by umiunagi at 21:58│Comments(0)
│日々