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2012年04月09日

書評:『海の王国・琉球』


最近仕事で沖縄市の某所に通勤している。

毎日があっという間に過ぎ去り、そして現在進行形の怒濤の日々。

でも自分を活かしている、活かされている感触が確かにある。


そんな日々の中、先月に引き続き沖縄初の市民メディアOAM(沖縄オルタナティブメディア)の沖縄本レビューを書かせて頂きました。


今まで知る機会もあまりなく、向き合って来なかった琉球の歴史を知っていきたい。

でも、まだまだ道は険しいわ・・・;)


よろしければご一読ください。



沖縄本レビュー
2012-04-07
『海の王国・琉球』
著者:上里隆史



上里隆史という歴史学者を知ったのは数年前。
とある公民館講座で地域の歴史講座を受講した時だった。
受講した理由が至って不純。講師がおよそ私の抱いている学者という職業イメージには、似つかわしくない程の男前だったからである。
理由はともあれ、この著者の魅力が今まで興味のなかった琉球の歴史を知りたいと思う動機になり、この本を読みたいというモチベーションに繋がったのは事実だ。
そんな著者が書いた『海の王国・琉球』は、国境を超えた「海域史」という視点から「古琉球」の歴史を読み解いていくというもの。


古琉球とは十二世紀頃から一六〇九年の薩摩軍侵攻までの歴史を指す。その時代、王国の支配とは舟によってつながる海上ネットワークの支配であり、海域アジア(東シナ海域+南シナ海域)をつなぐ民間主導の交易ネットワークに包摂された一つの拠点としての琉球の性格に注目しなければならないと著者はいう。


さらに舜天王統(源為朝伝説)から始まり、英祖王統、察度王統、第一尚氏王統、第二尚氏王統と続く、血筋によって王統を区分している「王統史観」を骨格とした歴史書にある「古琉球」はリアルタイムではなく数百年後の王府の価値観で記述されたものであるとし、それのみに依拠して古琉球の全体像を描くことは極めて困難であり、今世紀のフィルターをはずした上で古琉球の歴史実態を見定める必要があると解く。

<海域>と<港市>をキーワードとして外の世界との関わりも視野に入れながら古琉球とは、どんな時代だったのかを検証している。全体を通して「古琉球」時代の人々は、海上ネットワークを駆使しアジアの拠点として諸外国との国交を通じて繁栄させるだけでなく、時には相手の文化を自国に取り入れさらに琉球風に進化させながら、実に巧みな外交をしてきた歴史を伺い知ることが出来た。


それにしても著者がいくら男前といえども、琉球時代の歴史を読むのは苦しい。沖縄生まれ沖縄育ちの私だが、学生時代に自分の生まれ島の歴史を充分に学んだ記憶がないからだ。日本史における「国生み」からはじまり様々な魅力的な武人が活躍した戦国時代までは何となく思い起こせるのに・・・そして歴史上の人物や情景に思いを馳せるというのに、琉球王国時代の歴史や人物について考えてみるどころか知る機会は殆どない。

これは私が不勉強なだけだろうか・・・?いや、やはり私達は自分の生まれ島に「誇り」が持てるだけの歴史的教育を受けてないように思う。


話が少し逸れるが著者もドラマ化の際に、時代考証に参加したという池上永一著『テンペスト』の大ヒットによって、かつて沖縄には「琉球王国」という国家があり、その王国を舞台に優秀な武人達が活躍し、中国を始めとする様々な国と類いまれな外交能力で交易し、時には防衛しながら王国を繁栄させ治めていく姿が話題を呼んだ。物語はフィクションであっても、その時代背景は「琉球王国」を描いたものであり、私にとってこれだけドラマティックで興味をそそられる琉球の歴史に出会ったのは初めての経験だった。

多分、我々うちなんちゅには、このような経験が不足している。

自分たちの歴史を様々な角度から知り誇りを持つことが、ひいては未来を担う子供たちのためにも必要なのではないかと、しみじみ考えさせられる一冊にもなった。





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Posted by umiunagi at 06:06│Comments(0)書き物
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