ソファーのおはなし。

umiunagi

2011年08月07日 21:58




先日とてもお世話になった元上司にソファーを頂いた。


数十万円もするヨーロッパ製のソファーでとても立派なものだ。


でもポイントはそこじゃない。



このソファーを頂く話が出た時、私達夫婦は今住んでいる借家には


分不相応だと思い、この有り難い申し出を断ろうと思っていた。




その話を聞きつけた私の母が



「断るなんてもったいない。あなたが貰って私に譲ってくれないかしら?」



と言って来た。




私はそれも良い考えかも知れないと思い夫に相談すると、いつも温和な夫は一瞬

怒ったような顔をして




「それはいい考えとは思えない。」



そう言った。



私がなぜか?と聞いてみると彼はこう言った




「僕らが貰わないとしたら、あの人は別の大事な友人に声をかけるだろ?
だから僕らが使わないのだとしたら、ちゃんと貰わないべきなんだ。」




そう言われてハッとした。



そうか、私達がお世話になった元上司は



激情型で仕事にとても厳しくて、その激しさから敵も多い人だった。


でもその反面、人一倍思いやり深く、人一倍愛情深い人なのだ。




そんな上司が、私達にソファーをあげたい。と連絡してきた。




私は夫の言わんとする事に気付いて、すぐ母に電話して断ることを伝えた。




すると母は




「そうね、そうだったね。あなた達がお世話になったあの方は、
そういう人だった。」




ごめん、ごめんと笑いながら電話をきる。





週末私と夫は、お中元を持って元上司に挨拶に行った。




するとそのソファーはとても綺麗に片付けられた部屋の中央に


配置されており、すごく上司の家に似合っているではないか。





ますます貰えないなぁ・・・そう思っていたら、元上司はこう言った。




「どうだ凄く立派だろ。家内もとても気に入ってたんだが少々置き場に苦労するんだ。どうか貰ってくれないか?

いや、実はな、来月一人娘が臨月で実家に帰ってくる。だから部屋を一つ開けないといけないんだよ。」




いつも厳しい表情の元上司の顔がほころんでいる、嬉しさを隠せないといった様子だ。


その様子を見て私達夫婦はソファーを貰うことにした。



そして今、私達の六畳のリビングにやってきて、威風堂々と居座るソファーを眺める。



ことの顛末を思い返すと”贈り物”っていうのは、こういうことを言うのではないの

かと思えてくるのだ。



幸せの伝播、大切な誰かにリレーしたい気持ち、相手の気持ちを慮って、笑顔で頂く贈り物。




そういう訳で我が家のものになったソファーは、この家の誰よりも大きな顔をして


リビングに鎮座している。






なんてことはない、ソファーのおはなし。

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